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イデア競馬新書06 part1

Part1 売上げ減少が止まるか


新しい馬券を発売しても・・・

日本中央競馬会(JRA)の馬券(勝馬投票券)については、「単勝」、「複勝」、「枠連」の3種類だけしか発売されていない時期がありました。
それでも、年間の馬券の売り上げは増え続けていました。1991年に、枠連より高額な払戻金が期待できる「馬連」という馬券が発売されるようになると、さらに馬券は売れることになり、1997年には年間4兆円以上の売り上げがあったのです。
しかし、その1997年をピークにして、この10年間は馬券の売り上げが減り続けているのです。
1999年から「ワイド」、2002年から「馬単」と「3連複」、2004年から「3連単」というように次々と新しい馬券が発売されているのですが、減少する馬券に歯止めがかかりません。
「3連単」という馬券は、非常に高額の配当が期待できるので人気の馬券になっていますが、100円でも競馬が楽しめることから、逆に一人当たりの購入金額が少なくなったようで、馬券の購入総額の増加には寄与していないのです。

(馬券の年間売り上げの推移の表)


払戻金への上乗せ

「馬連」のときは、魅力ある馬券の導入で売上げが増えたのですが、最近では馬券の種類を増やしても売上げの増加にはつながっていません。
そこで、JRAでは2008年からは払戻金を増やすというサービスを行うという発表をしました。それが、「JRAプレミアム」と「JRAプラス10」です。

JRAのホームページでは次のように紹介されています。

○ 「払戻金への上乗せ」について

JRAは、より多くのお客様に中央競馬を楽しんでいただくため、平成20年度から「払戻金への上乗せ」を実施することとし、本日付けで農林水産大臣に認可申請をいたしました。

実施内容については、以下のとおりとなります。


1.「JRAプレミアム」について
 下記の対象競走について、通常の払戻金に売上げの5%相当額を上乗せして払い戻します。

(1) 平成20年度の対象競走(計14競走)
・ 1月5日 : 中山金杯(GIII)、京都金杯(GIII)
・ 6月1日 : 日本ダービー(JpnI)
・ 12月28日 : 有馬記念(GI)を含む有馬記念当日の中山・阪神・中京競馬のすべての特別競走(計11競走)

(2) 平成20年度の対象投票法
  上記対象競走についてすべての
投票法(賭式)が対象となります。

 

平成20年度の対象レースはわずか14レースだけですが、「JRAプレミアム」というものが導入されることになりました。すべての馬券が対象になります。


2.「JRAプラス10」について
 通常の払戻金が100円元返しとなる場合、10円を上乗せして払い戻します。

(1) 平成20年度の対象競走
  年間のすべての競走
(2) 平成20年度の対象投票法 
  すべての投票法(賭式)が対象となります。

(注) 特定の馬番・組番に人気が著しく集中し、賭式毎の“払戻金の総額”と“上乗せすべき金額の総額”の合計額が“売上げの総額”を超える場合には、競馬法附則第5条第3項により、100円元返しとなります。


「払戻金への上乗せ」に係る農水大臣への認可申請につきましては、12月11日付で申請のとおり認可されました。


続いて「JRAプラス10」になりますが、これは2008年からの全レースで、すべての馬券が対象になります。


払戻金が増えれば売れる?

「JRAプレミアム」と「JRAプラス10」は、どちらも正規の払戻金の額にJRAの判断で払戻金に上乗せできるという措置になります。払戻金の計算などを変更する場合は競馬法などの法律の改正が必要になりますが、今回のような措置は農林水産省からの許可が下りれば、すぐにでも実施できるようです。
したがって、「JRAプレミアム」については、平成20年度はわずか14レースだけですが、平成21年度以降は増加される可能性があるというわけです。
払戻金が増えれば馬券も売れるということは、JRAも気がついているので、このような「払戻金の上乗せ」が行われることになったのでしょう。
馬券は減り続けているといっても、個別に見ると面白い傾向が見られるのです。次ページに単勝と複勝の売上げ推移を紹介しますが、この二つについては、最近の増加が目立つことがわかると思います。どちらも、このところ4年続けて売上げが増えています。特に、複勝については、2007年が過去最高の売上高になっています。

(単勝、複勝の年間売上げの推移の表)

各馬券のシェアは次のようになります。

(単勝、複勝の年間シェアの推移の表)

単勝と複勝のシェア自体がそれほど大きくないので、これらの事実は目立たないのですが、単・複の馬券を購入するファンが多くなっているわけです。後で述べますが、複勝については必ずしも競馬ファンだけではないかもしれません。
筆者はイデア競馬新書のシリーズを執筆していますが、最近になって単勝の本より複勝の本の注文が多くなっていることを、以前から不思議に思っていました。
今回、馬券別の投票数を集計してみてわかったことですが、最近は、複勝の馬券が非常に売れるようになっていたわけです。
複勝は、一番売れない馬券という時期があったのですが、最近では完全に単勝を上回っていて、「ワイド」や「枠連」にも並ぶ勢いになっています。黙っていても、2008年中には逆転する勢いでしたが、「JRAプラス10」の導入で、それは間違いなく実現されるでしょう。そればかりか、複勝は2008年にかなり大幅な伸び率が見込まれるはずです。
単勝と複勝だけが売れるようになってきたのは、理由があるのです。他の馬券と比べて、この二つの馬券は払戻金の計算で有利になっているのです。


単勝・複勝の払戻金への上乗せ

JRAのホームページには、払戻金の計算について、次のように紹介されています。

●払戻金の算出方法
 
馬券は、その売上額のうち約25%を引いた残り75%が払戻金として的中した人に配分されます。
この差し引かれる約25%を控除率といいます。控除率は、的中率が高ければ(本命サイドで決まれば)低くなり、的中率が低ければ(人気薄で決まれば)高くなるため、「約25%の控除率」というのはこれらを平均したものとなります。
なお、控除されたうち10%が国庫に納付され、残りの15%がJRAの収入となって競走の賞金や運営などの費用にあてられます。
払戻金の算出方法は右図(省略)の算式によって計算されます。

ここに馬券の控除率は約25%と書かれていますが、単勝と複勝だけは、もっと低くて約20%程度になっているのです。
以前のホームページには次のようなことも書いてありました。

単勝式・複勝式の払戻金の場合には、特別給付金(当該レースの売得金の5%相当額)が付加されます。

つまり、単勝と複勝については、現在でも払戻金の上乗せがあるのです。その影響で、単勝と複勝の売上げが伸びているのだと思われます。
「売得金の5%相当額」という言葉は「JRAプレミアム」にも出てきます。つまり「JRAプレミアム」というのは、すべての馬券について特別給付金を上乗せすることではないかと筆者は考えています。
「特別給付金」は1991年10月から適用になったものです。そのおかげで、「馬連」など新しい馬券が続々発売されても単勝と複勝のシェアには、あまり変化は見られませんでした。
2005年からは、この「特別給付金」が廃止されて、堂々と払戻金の中に組み込まれるようになったのです。2005年から、単勝も複勝も増え続けているのは、その影響であることは間違いありません。


応援馬券の影響も?

2006年10月7日から「応援馬券」というものが発売されました。
緑のマークカードの式別欄に、「単+複」という欄が追加され、単勝と複勝の馬券をセットで購入できるようになったのです。
JRAのホームページによると、応援馬券のように、単勝と複勝をセットで購入する投票券は、諸外国でも広く発売されているようです。イギリスやアイルランド、オーストラリア、ニュージーランドでは、「EACH WAY」という名称であり、フランスやアメリカ、香港などの国でも同じような仕組みがあるそうです。
応援馬券の売上げの数字が公表されていませんので、どれだけ売れているのかがわかりませんが、馬券が買いやすくなったことで、多少は単勝、複勝の売上げに貢献していることは確かでしょう。
ただし、応援馬券の場合は、単勝も複勝も同じ金額だけ購入するようになりますから、複勝が良く売れているという理由にはなりません。


大レースでは、当たっても外れても購入した馬券を持ち続けるというファンの方も少なくないでしょう。そのような記念馬券としては、今までは単勝だけ購入されていたものが応援馬券の登場により、複勝も買うようになったという影響もありそうですが、金額的には少ないと思います。
応援馬券については、単勝と複勝を同じ金額購入するのではなく、自分で購入するウェイトを変えられると良いと思います。筆者は、同じ金額で単勝と複勝を購入することはありませんから。